医院のブログ

矯正治療について

2026.09.07

「歯並びが悪い=自費の矯正」とは限りません


こんにちは。岡山県玉野市の矯正専門のクリニック「たにもとゆうこ矯正歯科」院長の谷本です。

「歯並びを治したいけれど、矯正は自費で保険がきかないんですよね?」これは、矯正相談でよく聞かれる質問です。

たしかに、一般的な歯列矯正は原則として健康保険の対象外です。

ただし、例外があります。

その代表が「顎変形症」です。顎変形症とは、単に「出っ歯」「受け口」「歯並びがガタガタ」ということではありません。

上あご・下あごの大きさや位置などに著しいアンバランスがあり、それによって噛み合わせに問題が生じている状態を指します。

たとえば、

  1. 下あごが大きく前に出ている
  2. 下あごが小さい、または後ろにある
  3. 顔の左右のバランスが大きくずれている
  4. 前歯が噛み合わず、奥歯だけで噛んでいる
  5. 矯正だけでは十分な噛み合わせの改善が難しい

といったケースがあります。

下あごが前に出ている
下あごが小さい、または後ろにある
顔の左右のバランスが大きくずれている(あごがズレている)

こうした場合、歯を動かす矯正歯科治療と顎の骨を動かす手術を組み合わせる「外科的矯正治療」を行うことがあります。

そして、一定の条件を満たし保険診療を行うことが認められた医療機関で治療を受ける場合には、顎変形症の治療として健康保険が適用されることがあります。

「私も顎変形症かも?」と思ったら・・・

ここが大切です。

見た目だけで顎変形症かどうかを判断することはできません。

「受け口だから顎変形症」

「しゃくれているから顎変形症」

「顔が左右非対称だから顎変形症」

とは限りません。

反対に、見た目にはそれほど大きな問題がなくても、骨格と噛み合わせを詳しく調べると、外科的矯正治療が適しているケースもあります。

診断では、

① 顔貌
② 噛み合わせ
③ 歯の位置
④ 上あご・下あごの骨格
⑤ レントゲン写真などの形態的検査
⑥ 顎の動きや咀嚼筋活動などの機能的検査
などを総合的に確認します。

そのうえで、

「歯を動かす矯正だけで改善できるのか」

「外科手術を組み合わせたほうがよいのか」

を判断します。

「保険が使えるか」だけで治療方法を決めないでください。

大切なのは「自分の噛み合わせや骨格にとって、どの治療が医学的に適しているのか」ということです。

その結果として顎変形症と診断され、保険診療の条件を満たすのであれば、健康保険を使った治療を検討できます。

保険適用の対象となる疾患や治療には条件があります。

「顎変形症っぽいから保険が使える」

「矯正歯科に行けば必ず保険になる」

というものではありません。

また、保険診療として顎変形症の治療を受けるには、指定された施設で治療を行う必要があります。

まずは「自分の問題が歯なのか、顎なのか」を調べる必要があります。

矯正を考えている方に、私がおすすめしたいのは、

「とりあえず矯正装置を選ぶ」ことではありません。

まず、「私の歯並びの問題は、歯の位置の問題なのか?それとも顎の骨格の問題なのか?」を確認することです。

特に、

「受け口が気になる」
「しゃくれが気になる」
「顔の左右差が大きい」
「前歯で噛めない」
「口を閉じにくい」
「矯正だけで治るのか不安」

という方は、一度矯正専門医に相談してみる必要があります。

「顎変形症ではない」と分かることもあります。

逆に、もし顎変形症が疑われるのであれば、早い段階で正しい診断を受けることで、治療の選択肢を知ることができます。

「保険が効くかどうか」より先に「自分の噛み合わせと骨格がどうなっているのか」を知る。 これが、矯正治療を考えるときの第一歩です。

ここからがとても大切なことです。

一般的な矯正治療は健康保険の対象外ですが、現在の制度(令和8年版)では、

  • 別に厚生労働大臣が定める疾患に起因する咬合異常(唇顎口蓋裂など68種の疾患:日本矯正歯科学会のホームページなどで確認できます)
  • 3歯以上の永久歯萌出不全に起因した咬合異常(埋伏歯開窓術を必要とするものに限る)
  • 18歳未満の患者であって、連続した3歯以上の先天性欠如歯に起因した咬合異常
  • 顎変形症(顎離断等の手術を必要とするものに限る。)の手術の前後における療養

など、限られたケースで矯正治療が保険診療の対象になります。

連続した3歯以上の先天性欠如歯を認める

② 「保険が使える歯科医院」には条件があります

そして、もう一つ重要なのことを申し上げます。

「自分は受け口だから、もしかしたら顎変形症かもしれない」

「顎変形症なら矯正治療に保険が使えると聞いた」

そう思って、矯正歯科を探している方もいらっしゃると思います。

ここで、ぜひ知っておいていただきたいことがあります。

保険が使える矯正治療は、どこの歯科医院でも受けられるわけではありません。

「保険診療を行える施設には、施設基準がある」ということです。

例えば顎変形症の手術前後の矯正治療を保険診療で行う場合、その医療機関は、厚生労働大臣が定める施設基準を満たし、地方厚生局に届け出ている必要があります。顎変形症の場合には、保険上の「顎口腔機能診断料」に関する施設基準が関係します。その中には、専用の設備や診断体制、そして顎の手術を担当する医療機関との連携体制などが求められています。 つまり、「矯正歯科だから、顎変形症の保険治療ができる」とは限らないのです。ここは、患者さんが意外と知らないところです。

③ 「矯正専門」と「保険で顎変形症を治療できる」は別の話

矯正歯科を探していると、

「矯正専門」

「矯正専門医」

「マウスピース矯正」

「成人矯正」

など、さまざまな特徴を掲げている歯科医院があります。

もちろん、それぞれに専門性があります。

しかし「顎変形症の保険診療に対応できるか」

という点は、別に確認する必要があります。

顎変形症の治療では、矯正歯科だけで完結するわけではありません。

必要に応じて、顎の骨を手術する口腔外科などと連携し、

術前矯正 → 顎の手術 → 術後矯正

という治療を行います。

そのため、医院を選ぶときには、

「顎変形症の治療をしていますか?」だけではなく、

「顎変形症の手術前後の矯正を、保険診療で行える施設ですか?」と確認することが大切です。

④「顎変形症かもしれない」と思ったら、まず診断を

ここで、もう一つ大事なことがあります。

患者さん自身が、「私は顎変形症です」と判断する必要はありません。

例えば「受け口」という一つの症状でも、歯の傾きが原因の場合もあれば、下あごの骨格が前方に大きく位置している場合もあります。

そして、その程度や噛み合わせによって治療方針は変わります。

歯を動かす矯正だけで改善できる場合もありますし、歯の移動だけでは十分な改善が難しく、顎の骨の手術を組み合わせる外科的矯正治療が適している場合もあります。

だからこそ、「保険が使えるか?」を最初に考えるのではなく、まず、「自分の噛み合わせの問題は、歯が原因なのか、骨格が原因なのか?」 を診てもらうことが大切です。

⑤ 保険が使えることだけをメリットにしないでください

これは、私が矯正相談で特にお伝えしたいことです。

「保険が使えるなら、そちらの治療を選びたい」と考えるのは当然だと思います。矯正治療は長期間にわたることが多く、費用も決して少なくはありません。ただ、「保険が使えるから、この治療にする」という順番にはしないでほしいのです。

大切なのは、「自分の骨格と噛み合わせに対して、どの治療が医学的に適しているのか」です。

その結果として、「矯正治療だけで十分」となるかもしれません。

あるいは、「顎変形症として外科的矯正治療を検討したほうがよい」となるかもしれません。

そして後者の場合に、条件を満たす医療機関であれば、保険診療として治療を受けられる可能性があります。

歯科医院を選ぶときに確認してほしい3つのこと

「自分は顎変形症かもしれない」と思っている方は、医院選びの際に、次のことを確認してみてください。

顎変形症の診断・治療を行っているか

単に「受け口を治す」のではなく、骨格的な問題を含めて診断しているか。

顎変形症の外科的矯正治療に対応しているか

必要な場合に、顎の手術を担当する医療機関と連携して治療できる体制があるか。

顎変形症の矯正を保険診療で行える施設として届け出ているか

ここは非常に重要です。 日本矯正歯科学会も、保険適用となる矯正治療を行える医療機関について、地方厚生局に届け出た医療機関であることを案内しています。

以上、矯正歯科へ相談される際のご参考になれば幸いです。

たにもとゆうこ矯正歯科(玉野市)・岡山A. you矯正歯科(岡山市)は「矯正診断料」「顎口腔機能診断料」算定の施設基準適合施設ですので、唇顎口蓋裂など別に厚生労働大臣が定める疾患に起因する咬合異常や顎変形症の矯正歯科治療における保険診療に対応しております。