矯正歯科治療用のインプラント(歯科矯正用アンカースクリュー)って?
たにもとゆうこ矯正歯科では、歯科矯正用アンカースクリューを用いた矯正歯科治療を行っています。
「歯科矯正用アンカースクリュー」ってご存知ですか?
矯正歯科治療に用いる小さなネジです。
歯を失ったところに植える「デンタルインプラント(歯の形をしたもの)」は聞いたことがあるかも知れませんが、矯正歯科治療でも小さなインプラントを使用して、矯正力のコントロールを行うことができます。
歯科矯正用アンカースクリューを用いることで、従来の矯正装置だけでは動かすことができなかった方向に歯を動かしたり、動かしたくない歯を動かさないように止めておいたりできるようになり、矯正歯科治療の効率と治療結果が飛躍的にアップしました。
ここでは、具体的に「歯科矯正用アンカースクリュー」がどのようなものなのかをわかりすく説明していきます。
1.歯科矯正用アンカースクリューって?
2.どこにどうやって使うの?
3.歯科矯正用アンカースクリューのメリット
4.歯科矯正用アンカースクリューのデメリット
5.歯科矯正用アンカースクリューを埋入するまで
6.歯科矯正用アンカースクリューの取扱説明

アンカーとは…錨(いかり)をおろす、固定するという意味。
1.歯科矯正用アンカースクリューって?
「歯科矯正用アンカースクリュー」は、2012年7月に薬事承認を受けた歯科医療機器になります。定義としては、「歯科矯正治療において矯正力付与の固定源として使用する金属製の小さなネジ」です。比較的新しい装置なのかな?(大丈夫かな?)とお思いになるかも知れませんが、薬事承認を受ける以前から、矯正歯科臨床では広く普及していました。これまでの多くの研究と臨床結果から、安全性・効果が保証された画期的なものが、この歯科矯正用アンカースクリューになります。

この写真が実際に使っているもの(撤去した実物)ですが、ネジの直径1.6mm×長さ6.0mmになります。想像より小さくないですか?素材はチタン合金製ですので生体親和性に優れています。また一度入れても、撤去したらなんの傷あともなくなりますのでご安心ください。
2.どこにどうやって使うの?
歯茎や口蓋(上あごの裏)に歯科矯正用アンカースクリューを埋入します。

どちらも、前歯をうしろに動かしたい(前歯を引っ込めたい)時に効果的です。アンカースクリューから力を加える(固定源にする)ことにより、奥歯の位置をキープしつつ、抜歯したスキマを十分に利用して前歯を動かすことができます。
アンカースクリューを固定源にしない場合は、綱引きの原理で、奥歯も前に動いてきます。

他にも、歯全体を奥に下げたいとき、斜めに傾いている歯をまっすぐに起こしたいとき、垂れ下がっている歯を押し込みたいときなどや、ガミースマイルの治療にも効果的です。
3.歯科矯正用アンカースクリューのメリット
歯科矯正用アンカースクリューを固定源に使用することで、歯を動かす方向の制限がなくなります。
ピンポイントで狙った歯に力をかけたり、多くの歯をまとめて動かしたりなど使用方法が広がります。
また、矯正力のかけ方の調整ができるので、効率的に治療が進みます。
そもそも、矯正治療で歯を動かせる範囲は、骨(歯槽骨)があるところになります。動かしたくない歯には余計な力をかけずに、限りあるスペースを存分に活用して、動かしたい歯を有効に動かすことができるのが、歯科矯正用アンカースクリューになります。
※患者さまそれぞれの歯並びや骨格、治療計画に基づいて判断しますので、全員に必ず必要なものではありません。
4.歯科矯正用アンカースクリューのデメリット
骨に定着する前に、歯科矯正用アンカースクリューが脱落してしまうことがあります。これは、アンカースクリューを埋入する場所や角度、骨のかたさや密度、上あごの場合は、空洞(上顎洞底)の位置なども関係してくるのですが、経験的に、咬む力の強さも影響要素としてあるのではと思っています。
脱落した場合は、場所を変えたり、骨の再生を待ってから、新しいものを再度埋入できますのでご安心ください。
5.歯科矯正用アンカースクリューを埋入するまで
・まず、レントゲン写真やCTなどで、埋入する場所や方向をしっかり確認します。歯の根っこ(歯根)が密に重なっている部位は避けるようにして、安全に留置できる場所を選びます。
・お口の中を実際に診て、歯茎を触って確認します。
・表面麻酔(塗りぐすり)→局所麻酔を少量打ちます。この時、少しチクッとする感じがあるかもしれませんが、表面麻酔で痛みを和らげるようにしています。
・歯茎に麻酔がきいたら、アンカースクリューを電動歯ブラシくらいの大きさのドライバーで埋入していきます。この時、アンカースクリューが入っていく(グッと押されて力がかかる)感覚はありますが、痛みは感じません。
・アンカースクリューがぐらぐら動揺していないことを確認します。
・カチカチ咬んで、痛みがなければ終了です。
このような流れでアンカースクリューを埋入していきます。実際に痛みを感じるのは、麻酔の針のチクっとするタイミングのみです。
処置中も、痛みがないか、そのつど声かけ確認をしますので、ご安心ください。
6.歯科矯正用アンカースクリューの取扱説明
歯科矯正用アンカースクリューを埋入してから、すぐには力をかけないようにします。
また、歯みがきはその日からしていただいて構いません。アンカースクリューの周囲は、汚れが溜まると脱落の原因になるので、優しく(できれば時計回りに)汚れを落とすようにしてみてください。違和感があったり、グラグラ動揺してきたり、抜け落ちたりした場合は、ご連絡ください。